愛の悪魔 / フランシス・ベイコンの歪んだ肖像 [Netflix]
現代絵画について何か語ることって難いですよね。
そう感じるのはたぶん私は絵を見る目が全然ないからだと思うんです。
ものすごく好きな絵のことをずっと考えていたりするほど入れ込んだ経験もないし、歴史的背景や価値を担保している文脈や批評家の解釈を聞いても、一般教養止まり。
「すごい」、「かっこいい」と思えないのはけっきょくセンスの問題なんだと思うけど、きっかけがあるなら好きになってみたいとも思ってるんです。
フランシス・ベーコンの絵画についてもそうで、一次情報ではなく、リンチの映画や、ギーガーのエイリアンの造形で影響を受けているとかそんなレベルの認識でした。
この「愛の悪魔 / フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」は、50代からの数年間、同棲していた30歳の恋人・ジョージ・ダイアーとの生活を通して、ベーコンがいかに倒錯的な人物であったかを窺い知れる内容になっています。
ベーコンはダブリンの裕福な家庭に産まれたのですが、若い頃から女装趣味があったため、競走馬の調教師であったマッチョな父親からはすぐに勘当。16歳で各地を転々としながら男娼の様な事しながら生活していたのだそうです。
この映画で描かれるベーコンはほんとに嫌なやつで、どういう意図があってなのか、自分が出入りしているインテリが集まるサロンにジョージを連れていったりするんですよね。
これまで接点がなかった種類の人達と交流する中で、ジョージは自身の教養の無さを恥じたり明らかに悩んで、フランシスに打ち明けたりしているのに、四六時中嫌味を言い続けてる。
とはいえ、彼は絵を描くインスピレーションを与えてくれる存在ではあったようで、遊ぶお金だけ渡してただただ囲ってるっていうスタンスなんですよね。
すぐにそんな関係は破綻してジョージは薬物の過剰摂取で無くなるのですが、その死すらもベイコンは作品化してしまう。
倒錯ではあるけども愛というにはどうなのかな。
サブリミナルを使った演出や坂本龍一による音楽などは気が利いてるし、それなりに楽しめるんだけど、ベイコンって僕にはよく分からないなという思いを新たにしました。